March 31, 2011

癒しの本棚

大震災の3月が終わります。まだまだ、行方不明の方々や危険状態の福島原発、不通のままの東北新幹線など、大きな課題が残っていますが、月と年度が替わるのを一つの手がかりに、すこしづつでも着実に前をむいてゆきましょう。
 そして、疲れてしまった心には、人生への慈愛に満ちた数冊の本を…。地震の後、なかなか交通手段がなく、しばらく札幌、苫小牧、秋田と留まっていました折に、本屋さんの文庫コーナーで入手し、順番待ちや空席待ちなどでセッセと読んでいた数冊です。
1)おじさんはなぜ時代小説が好きか 関川夏雄著 集英社文庫
 税別571円 
  司馬遼太郎、藤沢修平、山本周五郎など、人気時代小説がなぜ、人気なのかを、藩=会社や組織、とか現場感覚などの切り口から評論しています。面白いです。
2)私の梅原龍三郎 高峰秀子著 文春文庫 税別950円
 豊富な写真が入っていて、文庫にしては少々高価格の一冊ですが、もともと、高峰さんの手元に沢山残っていた画家の梅原氏家族とのスナップ写真にキャプションをつけて一冊にしただけに、プライベートスナップが中心。小気味いい文章と、高峰さん、梅原さんとも段々年を重ねてゆく様子がなんだか心にしみます。
3)彼女が演じた役 〜原節子の戦後主演作を見て考える〜
片岡義男著 中公文庫刊 税別743円
 戦後日本映画を代表する女優高峰秀子さんに続いて、原節子論となると、何だか急に日本映画づいているみたいですが。「晩春」「麦秋」「東京物語」の「紀子三部作」とよばれる主人公を演じた原節子を中心とした、映画論です。
4)うるわしきあさも  阪田寛夫著 講談社文芸文庫刊 税別1400円
 さっちゃんはね、さちこっていうんだほんとはね…の童謡詩人の短編小説集です。ものすごく丁寧に書かれた気がします。ひとつひとつの作品はどちらかというと哀しいし、明るくはありません。しかしながら、全編をとおして、ひとと人生への深い眼差しにあふれ
た文章にこころひかれます。

 新年度、心機一転、できるだけやってみましょう!

March 20, 2011

地震のあとで

 昨日19日にやっとやっと、10日ぶりに仙台に戻りました。
 わたくしは、たまたま9日水曜日に仙台空港から札幌へ向けて飛び立ちました。もちろん出発直前に今回の地震の前兆となる大きな地震があり、JR空港線もダイヤが乱れ、タクシーで空港入り。10,11日と札幌の仕事をして、11日は午後4時終了予定で、3時前そろそろ締めくくりの作業に入ったときあの物凄い揺れが…そのときはまさか、仙台が三陸があんなことになっているとは知らず。ちょっと中断してそのあとは、無事4時に仕事を終えたのですが…そのときになってはじめて、仙台や三陸、茨城までとんでもなく大変なことになっている、とのニュースを知らされました。
 新千歳空港へ駆けつけたけれど、もちろん仙台便など飛ぶはずも無く…家族をはじめ、知り合いの大勢の沿岸部の方々の安否がわからず、ほんとうに不安でした。
 しかし、幸い私の家族はなんとか無事でした。しばらくは何の移動手段も無く、結局、苫小牧からでているフェリーで秋田港へ。15日の秋田での仕事を無事終えて、さらに秋田空港から羽田へ。ボスとも再会し、さらに羽田から山形空港を経てやっと昨夜仙台に戻りました。長女夫婦と次男が夜のバス停まで迎えに来てくれました。もつべきは家族…とあらためてかみ締めました。
 なんて、なんて多くの尊い命が失われたことでしょう、お家も職場も家族も、あまりにも大きい災害に言葉もありません。
 今はただ、ご冥福をお祈りするしかないのでしょうか。
 さらに原発の恐怖が追い討ちを掛けています。
 だけれども私たち、東北人は、なんとか、立ち上がりましょうね。すこしづつでも、一歩ずつでも。

March 01, 2011

旅立ちに〜高校卒業式に贈る言葉は?

3月1日は、高校の卒業式が多いですね。遠き昔の自分の卒業式、13年前の長女の卒業式、10年前の次男の卒業式それぞれ小さなことが思い出されます。
 自分のは、親しい友人たちと校門近くの大きな木の下で撮った記念写真。いつのまにか、どこかに紛失してしまったけれど脳裏にそのアングルがくっきり残っています。
 長女はカトリックの学校だったので、聖歌が澄んだ歌声で響き渡り乙女の花園からの卒業…という雰囲気でいっぱいでした。
 次男のは、ヤンチャな子がやっと卒業する…と安堵感でいっぱいに。
 自分や自分のこどもには、「旅立ちに…」などなにも特別な言葉を贈ることなく過ごしてしまいました。もう、身近ではとっくに過ぎてしまった出来事なのに、やっぱり3月1日は、何か、いい言葉がないかな…と思ってしまいます。
 先日の日経新聞土曜版には、「忘れられない門出の言葉」として、読者から寄せられたいくつかが紹介されていました。
「習慣は人を作る」「希望しない部署も”随所に主たれ”の気構えで」「他人の身体的特徴を笑うな。笑われた人は必ず覚えている」などなど。
 それから、日曜日の東京マラソン日本人男子1位となった川内さんが学校事務職員をしながらの快挙、と話題になっています。彼の話はなぜか、ほっと温かな気持ちになります。今日、ご卒業の方々にもちょっぴり心にとめてほしい、と感じました。
 今頃は、きっと卒業証書が渡されたり、校長先生の贈る言葉がスピーチされたりしている時間かも。琴線に触れる一言、それぞれの胸にしまいこめましたでしょうか?
 わたくしからは、昨年逝去された歌人、河野裕子氏の代表歌から、いくつかご紹介いたします。

 花の輪となりたる少女らやはらかき喉と舌もてれんげの歌うたふ

 わが矛盾すぐに突きくる十七の論理の若さまだ防戦しうる

 書くことは消すことなれば体力のありそうな大きな消しゴム選ぶ

 二人しか居ない子のまず上の子が出てゆきたる 歯刷子置きて

 ご卒業のみなさんの明日に大きな希望が見えますように!